3rd album「光をゆけよ道のうしろも変わる」全曲解説

「光をゆけよ道のうしろも変わる」 全曲 作詞作曲:斉藤めい
 ※曲名をクリックで歌詞が見れます


1.ここにあるのが愛だ~!!!

"ラブアンドピースを歌ってます斉藤めいです"とか言ってるわりには、遠回しだったり、ひねくれてたり、わかりにくかったりする愛の歌ばっかりだったので、2024年4月の10周年"目前"イベントの直前に「ここら辺で自分が思うストレートな愛の歌を歌いたい」と思って書き上げました。

いつもは出来てすぐの曲はまだ歌詞を覚えられなかったりするのに、カンペなどいらねえ、とすぐ身体に落とし込めました。きっと10年間私はこの曲を待ってたんだと思います。ソロでもバンドでも大事に歌っている、今の斉藤の代名詞な1曲です。

見る角度を変えれば愛が由来だったということが案外たくさんあるのなら、見つけたすべてを愛だと言ってしまうのが自分の役割だと思います。

Dr.のフジセが「最初はなんじゃこりゃ、と思ったけど今は1番好き」と言ってました。


2.ほんとのことば

日本語という言語は、一文字の中に無限の意味が込められているそうです。たとえば「"い"」の中には「"意味"の"い"」「"居場所"の"い"」「"1"の"い"」......と、ただ言語を発音するための記号ではなく、文字自体が意味を持っているのだと。

丁度、"竹田の子守歌"を聴きながら「私の曲は文字数が多いなあ。思いっきり言葉の数が少ない曲を作ってみるか」などと考えているときにそれを知り、やっぱりそうだ、言葉を詰め込む必要はなく、たった一文字を大事に歌えばいいんだと思い至り、タイトルを「本当の言葉」にしました。

『いろはうた』のように一文字一回ずつとは行かなかったのですが、全ひらがなが入っています。

当初は、アルバムの中にそっと入ってるような目立たない曲になると思ってたのですが、バンドアレンジで想像以上に世界が広がって、ライブでも空気をがらっと変える曲に育ってくれました。きっとこれも日本語が持つ力だな。

ギターはDADF#ADチューニング。



3.ステイヤング!

2023年夏前。今のバンドメンバー(Ba.Masa、Dr.フジセハルヒコ、Gt.Hibari)になったときに「この人たちとならきっといける」と思いたちすぐに「ステイヤング!」と「29℃の南風」の夏の2曲をkivori studioにてレコーディングし、サブスクやリリックビデオをリリースしました。

斉藤の曲には他の季節よりも夏の曲がちょっと多めにあるのですが、その中でも思いっきり『夏だ~!!!』と浮かれてるのをやりたくて、キラキラしてる誰かの何曲かに憧れて作りました。斉藤めいの中ではトップレベルにJ-popしてると思います。

歌詞は奄美大島に行ったときの思い出で、言葉でもちょっと遊んでるつもりです。

「変な魚もとても楽しそう」「"会いたい"だけが全部の理由になる」って歌詞が気に入ってます。



4.スロースターター

"自分は音楽を始めたのが遅かった"という意識がずっとあって、そんなことはない!始めるのに遅すぎることはない!と一方では思っていても、やっぱりずっと遅かったと思ってました。

それでも、やりたかったことを始めたからこそ憧れた誰かや、求めていた場所が「周回遅れだって同じコースの上」に今あるのだと、自分にも、自分と同じような誰かにも言いたかったんだと思います。

できれば時代や環境がどうしても許さずに出来なかった人達の思いまで乗せて、たとえ切ない別れがあったとしてもやり続けるのだという密かな決意です。

2019年頃作った曲ですがバンドとしては新しく、今回のアルバムの中では1番メンバーがアレンジに悩んでました。

スタンダートなロックアレンジの中に静けさがあり、結果的には曲が込めたものを1番表現してくれる形になったと思ってます。



5.みんなのOFUDOSAN!

2025.5月アルバムリリース前に、先行で4月にシングルリリース。

コロナ禍に何気なく立ち寄った東京都日野市の『高幡不動』にて"不動明王はなぜ怒った顔をしているのでしょう。それは間違った道に行こうとする人々に怒り、正しい道に導くためです"という案内(※記憶で要約)を読み、人々を幸せにする為に怒ってるなんて!なんて愛の存在なんだよ!と衝撃を受け、恐れ多くも「降りてきた曲」です。

しばらくはソロライブで問題作として演奏してましたが、録音するにあたりシタールとかアジアンな楽器を入れたいけど弾ける知り合いがいないなと思ってたところ、バンジョー・桑原達也氏との出会いがありオファー、アメリカ産の楽器バンジョーらしからぬ仏教感のある音でカオスな演奏をしてくれ大満足。

シンセサイザーは池袋FI5VEで出会い「なんて美しく一音一音を弾くんだ」と思いオファーした、ピアニスト秋桜子さんに。

その他の音はいわゆる打ち込み(DTM)、ほぼ初めてのMIX作業も自身で行った為、制作に凄く時間がかかってしまいましたが、夢だった8cmCDもリリースできたのもあり、やれてよかったです。

未だに争いをやめられない、愚かな人間たち、私を含め。さあ一緒に不動明王様に怒られましょう。



6.2人

大切な友達とケンカしてしまった人間の歌です。ドロドロした心を覆い隠すように可愛い風にウフフフフとか言ってますが、決して開き直れた訳でもなく、改めて何かを変える勇気を出せる訳でもないから、頭の中でいろいろ解釈して納得しようとしてる、ちょっと哀しい人間を描いています。それでも強がりの中に真実らしきものを見出せたと思えることは、救いでもあります。

こんな個人的な曲を表立って演奏することはそんなにないと思ってましたが、ふとバンドで演ってみたところメンバーも案外しっくり来てくれたようなので、ライブのセットリストにも結構入るようになりました。

少しはこの曲に込められた情念も浄化されたかもしれません。

Gt.Hibariが「"~は神のみぞ知る"ってところが、"わかめの味噌汁"に聴こえる」と言うので、しばらくメンバー内で通称「わかめの味噌汁」と呼ばれてました。


7.Transparent Again

この曲を2021年に亡くなった"プニ夫"さんという人と、"高円寺 喜楽 music warehouse"という場所に捧げます。

プニ夫さんは斉藤めいバンド(当時:斉藤めい+2RPM)の初代ドラマーであり、ミュージシャン"斉藤めい"を育ててくれた喜楽の初代店長です。

贅沢を言えば、喜楽で一緒に過ごした人々へも捧げたい。
もっと贅沢を言えば、喜楽を知らない人々へも聴いてもらって、

タバコとお酒と汗のにおいが染み着いてて、今時なクリーンなライブハウスとは違うのにどうしても愛しいあの場所について、知っていてほしいと思ってしまいます。

プニ夫さんと喜楽のエピソードは斉藤めい10thロングインタビューby坂口ナオにも書かれているので省くのですが、曲名の由来は斉藤が喜楽で定期ライブをしていたときにプニ夫さんが付けてくれたライブタイトルからです。

「再び透明に」という意味で、「再透明」→「さいとうめい」という、ダジャレです。



8.29℃の南風

2014年に斉藤が作曲とライブを始めた年に創った最初期の楽曲なのでバージョンがいくつかあるのですが、「ステイヤング!」と共に改めて2023ver.として録音。

夏って、お祭りとか花火とか夏休みとか楽しいこともたくさんあるけど、お盆とか終戦記念日とか海辺とか、「命を想う」ことがたくさんあるよねっていう面の夏の曲です。

11年前、作曲を始めてすぐの頃自分の中にこんな感覚があったのかなと、自分で自分のことを思い出せないのですが、多分海がメロディーを、海に還った人々が詞を、連れてきてくれたんじゃないかとかそんな風に思ってます。29℃っていうのは暑すぎず爽やかに暑いであろう温度にしました。

YOUTUBEにあるミュージックビデオは、友人のkent isshikiが2014年当時マレーシアの離島で撮影してくれた映像をお蔵出しし、2023年のレコーディング風景を併せてるので観てくださいね。→YOUTUBE

毎日は削るものじゃなくて燃やしていくものだよきっと。



9.ビックベイビー

自分の殻を壊し、自由にしてくれた曲です。

ギターという楽器を愛してはいますが自分自身で弾くことに限界を感じた時、いっそギターを置き去りにしてしまうのはどうかと、2022年最終月の企画ソロライブでリズムマシンを鳴らしながら、いつまでも大人になれない大きな子供みたいな自分について歌ってみました。

そしたらなんだかとても自由になれました。客席に無防備に飛び込んでみたらお客さんがとても近くて、それは物理的にもですが心も近づけたような気がしました。

多分この曲が出来てから、私は私のライブを確立できたんだと思います。

そして『大人になれない大きな子供』で『大人になれない才能がハンパじゃない』人は、案外周りにたくさんいるんじゃないかと気付いて、ミュージシャン仲間も、ライブハウスにいるお客さんも、全員そうじゃんって勝手に巻き込んで、どんどん楽しくなっていきました。

バンドでも出来ないもんか、あわよくば”The Roots”みたいになればとバンドメンバーに聴かせたところ、アレンジが完成して『こういうことがやりかった』『このバンド最高じゃん』と希望が持てた曲でもあり、ライブで暴れる割に、おどけた歌詞のわりに、とても大切な曲です。

ビッ"グ"だとニュアンスが強すぎるのでビッ"ク"にわざとしました。

Ba.Masaは「この曲、手が疲れるんだよなぁ」と言ってました。


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アルバムジャケット:齋藤詩織 / Shiori Saito

1992年 埼玉県生まれ
2018年 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻 卒業
2020年 東京藝術大学大学院修士課程油画技法材料研究領域 修了

 - 個展

2022年 「ほの明るい配剤の底から」レイジンシャギャラリー(東京)
「ART SOLO」(台北)
「ボーダーボーダー」小林画廊(東京)
2023年「齋藤詩織展 -どこでもワンダーランド-」銀座三越
2025年「ミノルのつなわたり-」田町 小林画廊

 - グループ展
全ての経歴はこちら

2022年 「絵画のゆくえ 2022」SOMPO美術館(東京)「Art Fair Tokyo」 東京国際フォーラム(東京)「VOLTA Art Fair」ELYS,Basel(スイス)「ART OSAKA」大阪市中央公会堂(大阪)「ART JAKARTA」 ArtsphereGallery Booth(ジャカルタ)「ART FAIR ASIA FUKUOKA」(福岡)「HOTEL ART FAIR」(バンコク)「GIFT」小林画廊(東京)

アワード
2019年 「シェル美術賞展2019」 松井えり菜審査員賞
2020年 「FACE展 2020」 損保ジャパン日本興亜美術賞 優秀賞
東京藝術大学 杜賞

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斉藤めいの従妹。小さい頃、埼玉にある父方実家でよく一緒に遊んだ。

始めは別のイラストで進めていた。本ジャケット制作中に偶然、親族の法事があり、そのついでに詩織氏の実家である"齋藤家"が建て直し中とのことで見学に行った際のこと。斉藤めいも幼い頃からよく知っていたはずの場所が、建物がなくなることでとても自然豊かだったことに気づき、「齋藤家ってこんなに美しい場所にあったのか」と感動しながらボーッとしている場面を詩織氏がみて「こっちを描いた方がいいんじゃないか」と思ったそうで、急遽描き直してくれた。

なのでモデルは齋藤家周辺。ボツになったイラストも素敵なので、Tシャツとクリアファイルになってます。SHOPで買えます。

斉藤めい

歌とギターと作詞と作曲🎸 ギター弾き語りとバンド、ときどき楽器置き去り ラブアンドピース配布中

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